東京高等裁判所 昭和47年(ネ)2526号 判決
一、債権者が被控訴人同栄信用金庫、債務者が小林義雄(原判決物件目録記載不動産―以下「本件不動産」という―の前所有者)間の東京地方裁判所昭和四二年(ヨ)第四、五九七号不動産仮差押申請事件について、同四二年四月二二日に本件不動産につき仮差押決定がなされたこと、および右の仮差押決定に基づく執行として、東京法務局世田谷出張所昭和四二年四月二六日受付第一四二九九号をもって本件不動産の甲区四番に仮差押の職権登記がなされたことは、当事者間に争いがない。
そして、弁論の全趣旨によれば、債権者芝信用金庫が昭和四四年一〇月二一日本件不動産に対し抵当権に基づき任意競売の申立をしたこと(同裁判所昭和四四年(ケ)第一一〇六号)、被控訴人同栄信用金庫が昭和四六年一月一一日前記仮差押の被保全権利についての債務名義に基づき、本件不動産に対し強制競売の申立をし(同裁判所昭和四六年(ヌ)第一〇号)、同日前記の任意競売申立事件に記録添付され、前記の本件仮差押は本差押へ転移したこと、以上の事実を認めることができる(昭和四六年一月一一日に本件仮差押が本差押に転移したことは当事者間に争いがない)。
二、ところで、仮差押は、将来における強制執行による金銭債権の実現を保全するため、債務者に属する財産を仮に差押えその処分権を奪っておくことを目的とする執行保全処分であって、強制執行の附随手続である性格を有する。このように、仮差押は債務名義に基づく将来の強制執行を予定し、その執行を保全するための仮の処分であるから、仮差押決定に基づく仮差押執行の後に、債権者が債務名義に基づき強制執行の申立をした場合には、仮差押はその程度において本差押へ転移され、本差押のために重複した手続を繰り返さないで、換価の段階に進むことができるのであって、仮差押が本差押に転移した後においては、仮差押執行は本執行と不可分の一体をなし、本執行の取下げあるいは取消しがない限り債務者としては、もはや仮差押執行を本執行より切り離して仮差押執行のみの取消を求める余地はなくなるものと解するのが相当であり、したがって仮差押執行の基本とされた仮差押決定の取消を求めることはできなくなると解するのが相当である。
そして、仮差押決定の取消を申立てる者が仮差押債務者ではなく、その債権者が自己の債権を保全するため仮差押債務者に代位して取消を求める場合であっても、債権者代位権を行使する者は被代位者より有利な地位に立つ理由はないのであるから、前記の理は変わらないと解するのが相当である(代位によって保全される債権が停止条件付代物弁済契約による所有権移転仮登記に基づく本登記請求権で、右仮登記が登記簿上仮差押登記に対し先順位にあり、さらに仮差押執行が本執行に転移する前に本登記の条件が成就した場合においてもこの理に変わりはない)。
(久利 栗山 館)